2018年7月6日金曜日

敗因を挙げれば本田だが、さて彼の行動を止められるのか。


 ロシアワールドカップ本戦、日本対ベルギー。最終的に逆転され二対三で負け。まさか。劇的に。と、素晴らしい試合だったとは言えるが、日本人っぽい負け方だな、と、にわかの周囲が言えば、確かに納得もしてしまう。
 試合後、第三者であるイタリアの名将カッペロが日本戦を解説し、「私なら、あの時、本田に時間稼ぎをさせる」と言った。
 あの時とは運命の瞬間だ。
 後半二点先行し、二点返され同点。試合が振出しに戻った七十四分からは防戦一方。国際ランキング通りに圧倒されるばかりである。そして運命の九十四分。フリーキックを経て後、コーナーキック。最後のチャンスを日本は得る。キッカーは本田。すぐに蹴った。弾き返されカウンター。十秒後には日本は逆転されていた。何が足りないのかと、日本の指揮官は茫然自失に語った。
 さて。現実は受け止めても、実際にあの場に監督として立ち、本田のコーナーキックでカッペロが言うように時間稼ぎをさせることが可能なのか検証してみたい。
 まず、カッペロが言った、時間稼ぎをさせること、は戦術的に正しい。防戦一方であったわけだし、ロスタイム、コーナーで靴紐でも結べば時間は稼げる。そして延長戦の前にある休止時間で落ち着かせる事はできたであろう。カードは二枚しか切っていなく、最後の一枚でまだ勝負も出来る。もし、延長戦に入ったのならば、日本は後半の終盤よりも間違いなく有利であったはずだ。なるほど、監督の戦術としてはわかる。
 しかししかし、選手のあの時の判断はどうだろう。
 劣勢のあの場面で本田が考えることは何かといえば、起死回生のキックであろう。本田という選手の行動からして、間違いなく三点目を狙うのは明白である。いや、本田を知る誰もがわかるのではないだろうか、フランスの解説者でも、彼は絶対決めれると思っているような自信家なんですよ、なんて言っていたそうだし――。
 コーナーをすぐに蹴らせなければ、高速カウンターを防ぐ手立てを指示する事はできる。デ・ブライネだ。彼の近くに一人つければ良い。正確なロングフィードが高速カウンターを成立させるのだから――。そのためには、まず、コーナでゴールしか見えていない眼光鋭い本田にコーチングをする必要があるのだ。
 少し時間を戻して中村俊輔と本田が共にいたワールドカップ。プレースキックは全て中村が蹴ることになっていた。しかし、試合中、本田が蹴りたいと詰め寄った事があった。監督の指示を無視して。そして実際に本田が蹴った。
 さて、眼光鋭い本田に今ロシアで指示しなければならない。「延長戦を考えている。少しでも時間を稼いでくれ」
 三点目を取るなと聞こえているかもしれない。実際予選の三戦目は敗戦を指示したわけだから。
 タイムリープして何度繰り返しても、本田はすぐ蹴るのだろう。劇的を狙って。
 唯一回避する手段は三枚目のカードを切って本田を交代させることだが、それでは延長戦が戦えない。
 カッペロの言は正論だが結果論だ。本田が本田であるかぎり局面を再生しても手詰まりな敗戦である。

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