2018年7月17日火曜日

ロシアの地でサリダ・ラボルペは終焉を迎えたのか。

ロシアの地でサリダ・ラボルペは終焉を迎えたのか。:
 ポゼッションゲームの雄はスペイン、ラ・リーガである。そこにいれば、ゴールキーパーからパスを繋ぐ場合、毎試合見られる定石がある。サリダ・ラボルペ――。しかし、その基礎が南米にあることは専門家レベルでしか知られていない。アルゼンチンのラボルペがメキシコリーグで実践したボール供給法が、それだ。
 戦後から現代においても、フォワードは最大三人。そしてディフェンスも最小で三人だ。であれば、三バックにゴールキーパーを含めた四人でパス回しを行えば常に優位に立てるというのが、サリダ・ラボルペという戦術の基幹をなしている。もちろん、奪いに来る相手が一人あるいは二人の場合は更に有利に運ぶ。常に優位な位置がフィールド上の定点にあると言い換えてもいい。元ゴールキーパーの発見者ラボルペは実用を戦術に落とし込んだのである。そしてサリダ・ラボルペが発見された当初、スイーパーの再評価がなされ、ゴールキーパーにも足元の技術が必要であることが今度は明確に認識された。定石は南米から欧州に渡りスペインに特に根付いた。
 ロシアワールドカップでも、ゴールキーパーからボールを繋ぐシステムを採用している国は当然、これを使う。しかし、ドイツ、スペインは戦術の要塞たるサリダ・ラボルペに泥を塗ってしまった。あろうことかトニ・クロース、アンドレス・イニエスタというポゼッションの名手が単純なサリダ・ラボルペの最中に相手フォワードにボールを奪われ失点の原因となってしまったのだ。
 安全なサイドチェンジを行いながら、様子を伺うサリダ・ラボルペであるが、ボールにチャレンジすることを諦めないフォワードによって得点されてしまう――。各国のリーグ戦であれば、引き分けは許されるもので、それこそゴールキーパーにまでプレッシングを掛けることは少ない。しかし国の威信を掛けるワールドカップ。代表のフォワードともなれば、その国で最もアグレッシブな選手が担う役である。彼らに負けたサリダ・ラボルペ。ロシアの決勝でも、優勝国フランスに一矢報いたのは、ゴールキーパーまで向かっていった、そのアグレッシブさ、であった。
 現代のサリダ・ラボルペはどうやら、諦めの悪いプレッシングに弱いようである。

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