2018年7月7日土曜日

マン・ゾーンとボール・ゾーン

マン・ゾーンとボール・ゾーン:
 フットボールのディフェンスの大枠はマンツーマンとゾーンディフェンスである。今注目したいのはゾーンディフェンスだ。陣形守備やゾーンとも略す。ゾーンといっても、フットボールはバスケットボールではないので、コートに対して行うゾーンはセットプレイの場面でしか存在ない。
 フットボールのゾーンディフェンスは二種類に分けられる。人を中心にゾーン陣形を組むマン・ゾーンと、球を中心にゾーン陣形を組むボール・ゾーンだ。極自然と成立するゾーンは、相手の位置に応じて陣形を変えるマン・ゾーンであり、一見効率も良さそうに見える。しかし、フィールド全てでプレッシングが常識となった現代では、ボール・ゾーンは良い選択肢だ。
 ボール・ゾーンの発想は簡単だ。試合においてボールの行方こそ最重要なわけだから、それを中心に選手が行動したほうが効率が良い――。そして、マン・ゾーンと違い、状況によってマンツーマンが発生し高い頻度で接触がある事が特徴だ。ボールが移動してもそれは変わらない、ボールを取り囲むのだから、比較的安全なショートパスの交換でも、即座にプレッシングを掛けることが出来る。陣形がコンパクトであればなお良い。サッリのナポリは七メートルの間隔まで縮める。例えフィールドの片方に極端に寄っても、マンツーマンではないので、ボールから遠い場所に人はいない。せいぜいがサイドチェンジに対して一人置いておく程度で反対側にいる二、三人の相手に対応できる陣形守備の基本的利点も使える。
 ボール・ゾーンの最大の利点はトランジションの移行に優れていることだ。ボールを奪ってもボールを中心に陣形が存在しているし、奪われても同様だ。攻守切り替えの速さに注目が集まった現代により再発明された守備戦術といえる。
 ボール・ゾーンはイタリアの戦術家サッリが得意とする。弱兵を指揮し、個の力で打破できない現状でゾーンを選択するしかなかった彼は、その上で点を取る事を追求し完成させた。ボール・ゾーンは攻撃にも守備にも人数を割ける組織戦術である。


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