2018年7月19日木曜日

発炎筒の中で選手を育てるクロアチアリーグ。

発炎筒の中で選手を育てるクロアチアリーグ。:
 フランスにはクレールフォンテーヌ、ベルギーにはサブロンが作ったトップスポルトがある。どちらも近代的なアカデミーで移民の吸収を行いながら、ロシアで躍進した国だ。強さは育成部門にある、という論調もわかる。しかし、クロアチアは育成部門が優れているわけではない。そもそも、協会が主導するアカデミーは存在しない。あるのはスポット的な若手強化合宿が一週間程度。これで、クロアチアの育成部門が優れていると論じてしまうのなら、日本の育成部門はフランス並に優れていると言わなければならない。日本にも協会主導の育成部門はあるし、予算で言えばフランス並である。
 クロアチアのリーグには、元国家クラブのディナモ・ザグレブがある。既に税制の優遇はなくなったが二十一世紀に入ってからザグレブが移籍金で得た金額は五百億円を超える。日本の過去Jリーグ全てで得た移籍金を足し合わせても届かないだろう。クロアチアの経済規模は日本の十分の一で失業率も高いが、このクラブは恐ろしく潤っている。
 ディナモ・ザグレブのゴール裏はいつも発炎筒が焚かれる。八十六年から存在する熱狂的なウルトラズ、バッド・ブルー・ボーイズが選手たちを煽る。相手に三点差をつけ、後でパス回しをしようものなら、発炎筒をフィールドに投げ入れ、ゲイ野郎とブーイングを浴びせる。小クラブに負けたものなら、練習場も発炎筒に塗れる。負けることに命の危険を感じる事は日本ではない。東欧、特に旧ユーゴスラビアは民族主義が今だに強い。クロアチア人はセルビア人を虐殺しているし、セルビア人もアルバニア人を虐殺している。そしてアルバニア人はロマを迫害する。ルカ・モドリッチが「クロアチアのリーグで活躍できるなら、どこでも通用する」と言ったのは、強固な胆力が鍛えられるからであろう。例えば、想像してみてほしい、技術に優れているが無観客試合で戦う選手と、技術はさほどでもないが発炎筒の中で戦う選手。どちらが強いかは科学的には証明出来なくても、人間の感覚としては自明というものだ。
 地域の代理戦争のようなリーグは欧州や南米にはたくさんある。選手の優秀具合がもし発炎筒の数であるなら、発炎筒自体を禁止している日本に勝ち目は無い。ちなみに、発炎筒の数とチームの強さは比較しているという論文もある。

madara.tenmoku. Powered by Blogger.