2018年7月6日金曜日

ハリルは結局、的を得ていたのではないだろうか。


 ハリルが分析したように、ワールドカップの勝ち所は彼が掲げた縦の速さだった。日本フットボール界のスポンサー的問題で、ハリルより本田を優先した田嶋協会だが、グループリーグを突破したのも柴崎の縦のセンスであったし、本選に破れたのも縦の速さであった。そもそも、ブラジルワールドカップの戦術分析にも、ゴールに至るまでのパス数は少ない方が点を取りやすいことは判明していたし、世界標準でもあるプレミアリーグは極端に縦に速い。ロシアを振り返れば、ハリルの遺産でベスト十六を達成したとも言える。もちろん細かい修正に関しては西野の手腕であるが――。
 日本協会の監督選びは旧ユーゴ系列、イタリア系列、そしてフランス系列と協会間で盟友関係を結び、歴代の外国人監督を招聘してきた。特に、旧ユーゴ系が多いのは、なぜかと疑問に思う人はいるだろうが、彼らは数珠つなぎのように自分たちのコミュニティーの人間を猛プッシュするような売り込み上手な所がある。影響は国内リーグにも及び実際旧ユーゴの監督は多い。しかし逆に、イタリア、フランスはあしらうように、ザックやトルシエと、一流半ぐらいを押し付けてきた。世界のフットボールはアジアではなく欧州なのだから欧州の監督にとってアジアはキャリアの凋落に違いない。カッペロやリッピを見ると余生のようにさえ思う。まあ理由もわかる。アーセナルの偉大なアーセンも、日本で監督を指揮していたばかりにプレミアに来たときには、アーセン、誰?と皮肉を食らったのだから。
 欧州の最前線で活躍する優秀な監督が日本代表の監督になるわけではない。国際ランク五十位以下の国の監督を引き受ける欧州人は少ない。
 それに加えロシアで日本協会が断行したことは汗水垂らして得たチケットを奪って本人は置いてけぼりにするような仕打ち。オール・ジャパンと鼻息荒く、結果は存外に良かったが、次の監督選びが難航するのは見えている。
 ハリルはフランスリーグの英雄だから、殊更フランスの受けは悪い。イタリアは日本にかまっている場合ではないだろう。とすると、もし外国人監督を招聘するなら、近年日本人を輸出しているリーグ。スペインやドイツに頼る可能性は高い。
 今の日本に足りないのは極限の冷静さだ。もちろん、高さもある。そういえばハリルも選考の点にサイズを挙げていた。
 ハリルのやっていた事は確かに最先端で的を得たものだった。ポゼッションにさほどの意味はない――、スペインの千本の無駄パスが証明した。縦に速く――、日本はセネガルと互角に戦った。サイズも必要だ――、空中戦が得意なフェライニ投入は勝敗を分けたポイントでもある。ただ日本人が出来なかっただけでハリルのフットボールは世界標準であったのだ。
 さて、ロシアでの日本の指揮官が退任することが決まった。どのような理由で次の監督を選ぶのだろうか。
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