2018年7月17日火曜日

縦に出し、目標とする位置に止める練習。

縦に出し、目標とする位置に止める練習。:
 時速九十キロのパスは一秒間に二十五メートルを進む。フィールドの半分を進むのに二秒だが、厳密にはシュートの初速に匹敵する時速百二十キロ程でなければ二秒では届かない。芝生に吸収され、減衰するエネルギーは多い。ところで、人間は〇.一秒を判別可能だが、静止から動き出しの一メートルを進むのに〇.三秒程必要だ。合格ラインとしては、ボールの二メートルに接近する相手に取られないような高速パスを〇.四秒以内に通せば門をくぐることが出来る。もちろん、複数の相手の横を通すならば難易度は増す。
 結局速いパスを出すことは敵がカットする確率を低くするといった、当たり前の結論に成るが、計算は一つの目安を提供し、それに沿った練習の構築に役立つ。通そうとする敵との距離が二メートル離れていて、シュート並の高速パスを〇.四秒以内に通せるならば、そのパスを敵はカットすることはできない。
 出し手に求められる性能は、時速百二十キロのパスを出すキック力、〇.四秒以内に蹴る動作、加えて精度だ、比較として中村俊介のフリーキックは時速百キロである。パスの種類はショートとロングの二種類。フィールドの四分の一、ハーフコートの距離、を正確に味方に届けることが必要だ。一方、受け手は最速一秒あるいは二秒だ。その少ない時間で初動し、相手を往なし、ボールの軌道に入り、そして足にフィットさせなければならない。プロの世界では出し手が出す瞬間に初動は終えている事が多い。それが有利に働くからだ。
 アスレチックなフットボールの世界は高度な動作技術なしでは成り立たない。
 加えて優れたパサーは受け取りやすいパスを工夫する。受け手の前で止まるパスだ。重心を後ろに起き、ボールの底を滑らせるように蹴る。足は振り切らない、寸止めにするタイミングは目標位置の微調整に使う。振り切らないため動作は速い、しかし力は弱いため補填する、インパクトの瞬間の重心移動で――。このように蹴ると、力強くどれだけ速い初速でも芝生を這うことでピタと止めることが出来る。中には腕を丸めて蹴る選手もいる、重心移動の補正を腕で行っているのだろう。
 これは無回転シュートの撃ち方に似ていて、一度コツを掴むとすぐにできるようになるが試合毎に微調整が必要だ。芝の長さは一定ではない。

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