2018年7月14日土曜日

縦に出すことの利点。

縦に出すことの利点。:
 縦に速く――。現代フットボールのキーワードだ。しかし、何故縦に速く出すのか、理論的に示されていないことが多い。縦に速く出す、最短距離だから良い、といった感覚の人間は多い。しかし、厳密には違う。縦に速く出すことは組織化されたプロのチームであれば有るほど利点のあるものなのだ。
 そのためには、まず、レーンの概念を説明する必要がある。従来の横に三分割した、アタッキング・サード、ミドル・サード、ディフェンシブ・サードは有名だが、二十一世紀に入りショートパスの有効性が証明されると、縦に分割する考え方が生まれた。これがレーンの概念で、一般的に五分割する。似ているが英国では縦に三分割する考え方が古くからある、しかし、これはキック・アンド・ラッシュのためであり、分割方向は同じでも原点が違う。
 縦に五分割するレーン理論はシンプルなルールに従う。同じレーンにパスを出さないことだ。このルールに沿うと陣形が最適化され、受け手の動きが明白になる。レーン理論は後ろ向きでボールを受けないために、角度を鋭く斜め前に出すこと、と言ってもいい。
 しかし、今や常識となった、このレーン理論には欠点がある。それは斜め前のロングフィードに対して相手が対抗しやすくなることである。相手がマンツーマンを採用しているときはより顕著だ。同じレーン以外では異様に人が多い。人が多ければ多いほどパスカットされる確率は高くなる。しかし、逆に同じレーンを考えると、前進距離に対して相手が少ない。レーン理論の同じレーンにパスを出さないことを突き詰めると、同じレーンに少し長くパスを出したときの有効性が現れるから不思議な感覚であるが、隣のレーンにショートパスが基本、そしてサイドチェンジはリスクが高い、だから同じレーンにロングフィード、と導出される。もちろん、ノーリスクではない、目の前の相手を往なす必要があるからだ。
 監督の中にはサイドチェンジの信望者が多いが、レーン理論をプレイモデルに組み込んでいる場合は精度の高い選手以外は禁止するべきものである。

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