2018年7月8日日曜日

現代フットボールの共通戦術、モダンプレッシング。


現代フットボールの共通戦術、モダンプレッシング:
 現代フットボールはハードだ。ストライカーの走行距離が五キロに満たないマラドーナの時代とは違うし、スプリント速度が二十五キロ程度のジーコやヨハン・クライフが体力測定で入団を拒否されるような時代である。
 アスレチックな能力を前提に現代フットボールは再構築を行っていると言っても良い。しかし、十代前半のゴールデンエイジには技術を中心に教えなければならないという、アカデミーの育成者にはジレンマもある時代だ。
 何故ここまでアスレチック化しているかというと、一つには技術革新により数値化しやすくなったからだろう。もう一つは、相手へ寄せる能力が勝敗を大きく左右することがわかってきたからだろう。確定的ではないが確率的にわかる事実があり、チームを個人ではなく群れとして解釈した場合、あるいは、一試合一試合の原因を追求せずスタッツのみで解釈した場合、出てくる結論は、走行距離やスプリント回数、ヒートマップに拠るからだ。
 データは何を意味しているのか。データから還元し勝ちやすい練習を模索する作業は当然行われる。兎跳びを百回するような練習は出来なくなった。クラブチームは経済の上に成り立っており、勝つために必要な事は熱血より合理性。ジョグを外し、ボールを扱う練習のみを行うチームも出てきた。プレイモデルは監督で買えるが、現代フットボールに共通するものは、まず必須といえる。
 モダンプレッシング――。
 言葉は英国の指導者がユーモアの一種でいったであろう言葉を採用するが、モダンプレッシングはいくつかのシークエンスで成り立っている。
 モダンプレッシングの構成要素は、ハイプレッシング、フォクシープレッシング、ゲーゲンプレッシングだ。その動作中に五秒ルールとセンターカットルールを適用する。ハイプレッシングは高い位置からプレッシングを行う単純な事象の事で、フォクシープレッシングはプレスの寄せ方に関する決まり事だ。奪ったらどのように展開するかを決めるのがゲーゲンプレッシングであり、さらにはゲーゲンプレッシングとは攻撃の仕方の一種であるから、監督の志向するプレイモデルに依る。五秒ルールは奪われたら五秒以内に奪い返す約束事で、センターカットルールはパスの出処は中央を最初に切るという確率的に良い方針であり、この二つのルールは全体を通して共通する約束事だ。
 しかしモダンプレッシングを九十分間行う事は難しい。スプリントは出来て五十回程度で、延べ時間は僅か五分間。
 アリゴ・サッキに始まりラングニックとペップが洗練させたモダンプレッシング。もしフィジカルと認知の限界がまだ選手に存在するならば、数年後にはさらに洗練されたものに成るだろう。現状は陣形をコンパクトにするチームが多いように、モダンプレッシングの省エネ化が課題となっている。

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